―――コトコトコト―――
冬の凍える寒さの中、教団内を駆け抜ける暖房の音。
この時代ではハイテクとも言える、スチーム暖房完備の室内は
外の寒さとは裏腹に心地よい暖かさを感じることが出来る。
だが、今まで貧乏生活に慣れていた少年は、
突然の降って沸いたような快適な生活環境に、
身体が逆についていけずにいた。
暖かい室内、乾燥した空気。
夜、暖かい毛布に包まれて眠っていると、
あまりの暖かさで寝汗を必要以上にかいてしまう。
そんなことを繰り返している日の朝、
アレンは目を覚ますと自分の変調に気がついた。
『……あれ……?』
―――身体が重い…目が……開かない―――
そう……それは風邪だった……
猛烈に身体がだるくて節々が痛い。
さすがのアレンもここまで来るともう諦めるしかない。
小さく参ったなぁと呟くと、再び沈み込むように眠りについた。
どんよりと薄い靄のかかったスクリーンのような夢。
そこで見たのは、大好きな人の優しい笑顔だった。
いつもは仏頂面の恋人が、自分に優しく微笑みかけてくれている。
アレンの恋人は感情表現が苦手で、とてもぶっきらぼうだ。
本当は優しく微笑みかけて欲しいと思っても、中々そうはいかない。
だから、目の前に繰り広げられる笑顔があまりにも綺麗で、
夢とは知りつつもしばらく見惚れてしまっていた。
やっぱ、夢だよなぁ……だって、神田がこんな風に笑ってくれるはずがないもん。
こんな夢ならずっと見ててもいいや……
などと思っていると、ふと額に心地よい感触を感じる。
アレンはひんやりとしたその感触に、徐々に意識を取り戻し、
重い目蓋をゆっくりと開けた。
『……カンダ……?』
ベッドサイドにいる人影に声をかけようと思ったが、それは声にならず……
声を出そうと思い切り息を吐き出したせいで、胸のあたりが重く痛んだ。
そして、それに反応するようにアレンは苦しそうに咳込んでしまった。
「……ゴホッ、ゴホッ……」
「……モヤシ?……目が覚めたか?」
いつになく穏やかな表情がアレンに帰ってきた。
神田はアレンの傍へ寄りグラスに入った飲み物を渡すと、
今度は額に乗っていたタオルを手際よく取り替えた。
アレンは『ありがとう』と掠れた声で呟き、
グラスの中の冷たいレモン水を口に注ぎ込んだ。
「いつから調子が悪かったんだ?」
「……う〜ん……いつからだろう……?
2〜3日前ぐらいから……かな?」
申し訳なさそうに小さく項垂れる。
いつもなら不機嫌そうに舌打ちをするか、嫌味の一つも返ってくるところだ。
ところが何故か今日の神田はそうせず、
汗ばんだアレンの前髪を、ただくしゃりと優しく撫でた。
それもそのはず、3日前と言えばアレンは任務から帰り着いたばかりの神田と
彼の部屋で激しく愛し合っていた。
任務を終えた後の神田は、殊のほか激しくアレンを抱く。
その嵐のような情事のせいで、ほとんど寝させてもらえなかったのだ。
事の一端は神田にも責任があると言う訳だ。
「どうせお前のことだから、鍛錬の後で汗かいたまま寝たんだろ?
人のことにはお節介なくせに、自分のこととなると無頓着だからな……」
「……あはは……まぁ、否定はできないけど……」
「だが、今度からは……俺も気をつけるとしよう……」
「……カンダ……?」
いつもなら到底言いっこない台詞に、アレンは目を丸くする。
神田はふわりと微笑んだと思うと、今度はいきなりアレンに口付けをした。
驚いて抵抗を試みたもののそれは全く声にならず、身体に力が入らない。
アレンは気持ちとは裏腹に、完全に神田のキスを大人しく受け入れた形になっていた。
「いつもこれぐらい大人しいと楽なんだがな……」
神田はそう言って、愉快そうに口の片隅をあげると、
今度はアレンの着ているシャツを、あからさまに肌蹴た。
「ひゃっ!」
アレンは、神田のいきなりの行為に目を丸くすると、
顔を真っ赤にして口をパクつかせた。
まるで無抵抗な人間に何をするんだと抗議しているように。
だが、そんなアレンの狼狽振りを見て、神田はただ可笑しそうに笑って見せた。
「くっ……お前、何か大きな勘違いしてねぇか?
身体じゅう汗まみれだから、拭いてやろうってんだよ……
いくらなんでも、病人にまで手を出しやしねぇよ……」
目の前の神田の笑顔と、夢の中の神田の笑顔がシンクロする。
アレンはただぼうっと、その笑顔に見惚れてしまっていた。
すると神田は言葉の通り、今度はタオルでアレンの身体を拭きだす。
「知ってるか? お前2日間熱出して眠り続けてたんだぞ?
朝飯食いに来ねぇから、おかしいと思ってきてみりゃこのザマだ。
まぁここんとこ、任務が立て込んでて、ゆっくり寝る間もなかったからな」
コムイの野郎は人遣いが荒いから……と付け加え、
それでもいつになく上機嫌なのが見て取れる。
神田が自分を心配して様子を見に来てくれた。
それだけでも嬉しいのに、
この2日間ずっと自分の側にいてくれたであろうことを考えると、
思わずアレンの目頭が熱くなる。
アレンが想像していた通り、神田は2日間ずっとアレンの側に付き添った。
その間、アレンの笑顔を思う存分堪能できたというのもあったが、
熱にうなされるアレンが、何度も自分の名を呼んだことがとても嬉しかったのだ。
神田は機嫌がいいと饒舌になることを、自分でも知らなかったらしい。
そんな事とは知らないアレンは、
まるで夢の中の延長のような素敵な恋人にうっとりとしながら
身体を預けていた。
いつも自分に触れてくる、綺麗な手と形のいい長い指……
情事の際はその指がいつだって自分を優しく翻弄する。
ふと思い出しただけで、熱を帯びた頬がいっそう熱くなった。
瞬間、後ろで緩めに束ねた髪の毛がするりと背中から前に落ち、
アレンの胸元をくすぐる。
『……あっ……』
はっとした時にはもう遅かった。
気持ちよりも先に、身体の方が先に反応してしまっていた。
神田が気付かないことを願いつつ、恥ずかしさで顔が真っ赤になるのを感じる。
「……モヤシ……お前、風邪ひいてんのに、
こんな事ぐらいで感じてんのか?」
ふるふると首を振り、思い切り否定してみるも、
その素振りに身体の方は全く逆行していて、
神田が肌に触れる度に、ズボンの中の昂ぶりがその角度を増す。
「……ったく……仕方ねえな……」
「……つっ……!」
神田の手がアレンのズボンの中へと進入する。
その冷たい感触が心地よくて、アレンは思わず身をよじった。
だが、アレン自身を捕らえた手は容易には彼を解放せず、
感じる穂先を弄ぶ。
「……あっ……ああっ……」
「熱があろうがなかろうが、ここだけは相変わらず素直だな……」
身体の熱が程よく全身に広がって、
まるで熱に侵されたように全身に甘い痺れが走る。
神田の手が心地よく動くたびに、アレンは堪らずに燻ったう呻き声を上げた。
「かっ、かんだぁ……もう……だめっ……!」
「いいぜ?もう楽になっても……」
「ふっ……ううんっ……」
耳元で神田に囁かれるだけで身体が疼く。
巧みな手の動きと同時に首筋を軽く舐め上げられると、
アレンは背を仰け反らせ、その迸りを神田の手の中へとはなった。
神田がアレンにくれるもの。
それは時に酷く強欲な愛情表現でもあるが、
多くは今夜のように愛しく切ない。
熱とだるさとで、アレンは無意識に神田の腕の中で
ゆっくりと眠りに落ちていった。
≪あとがき≫
いやぁ〜自分が風邪っぴきだったので、こんなのを思いつきました;
病気しても萌えは健在?!( ̄▽ ̄;)
……で、このつづきは裏部屋で……(〃⌒―⌒〃)ゞ
激しいのが苦手な方は、ここまででご遠慮くださいませねv
いちおう裏の入り口がわからないというお問い合わせが多かったので、
今回はサービス期間としてまんまリンク貼ってあります;
裏が未だわからないという方は次のページからお入り下さいませ(●⌒∇⌒●)
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